家庭をとるか音楽をとるか
今期のNHKの朝ドラ「エール」がとても面白いので(音楽家を扱っているということもある)、楽しく観ています。
今日はヒロインが妊娠したものの、音楽学校の記念公演には出演したい…というストーリーでした。
共演者に戸惑われるヒロイン。
プロの先輩歌手にも「プロってのは自分の子どもが死にそうな時でも舞台に上がらなければならない、あなたその覚悟がある?」と言われてしまう。
昔も今も女性にしかわからない難しい問題だなぁと思いました。
大学1年の夏に私は誕生日を迎え、当時付き合っていた恋人から「卒業したら結婚してくれ」と言われたことがありました。
同時に「子どもが欲しい」とも言われました。
「私は歌手の勉強をもっとしたいの、大学を出ても足りない。留学をしないとダメかもしれない。だからそれは難しい」と言いましたが「子どもも留学先に連れていけばいい、自分も面倒を見る、子どもは可愛いから複数欲しい」と言う彼に、なにか翳りのようなものを感じました。
案の定2年後に関係は破綻します。
たぶん彼は自分を「立てて」くれる女が欲しかったんだと思います。
でも私はそれはまっぴらだった。
オペラ歌手の卵として研究所に入所して、ゆくゆくはプリマドンナを夢見ていた私は、恋をしてしまったけど子どもなんかいらない、自分のことで精一杯、と思っていた。
男ってなんて分かってくれない生き物なんだろう、と悔しくてならなかった。
結局、恋もオペラ歌手の夢もなくなりましたが、ありがたいことに留学を叶え、結婚はしていないものの音楽を続けていられるのですから、欲張りなことを言ってはいけないな(笑)、とも感じています。
16歳のときに読んだ、とあるオペラ歌手の方が書かれた本に「私の人生に、結婚か、歌かと迫られる選択があったならば、私は歌を取ります」という一文がありました。
そのストイックさにクラクラしたのを覚えていますが、まさか自分がそのような経験をするとは思いもよりませんでした。
プロポーズ(もどき?)を受けてから数十年経ちました。
今は、当時の恋人はおそらく結婚して子どもも何人かいることでしょう。過ぎたことです。蒸し返すのはやめにしたい。
私はまだまだ夢を見て、夢の途中でバシバシしごかれることもありながら頑張っています。
結局「音楽」をとりました。
おそらくはこれから先、私と人生を共にしてくれる人が居たら、それはそれで幸せ。
でも、たくさん友達がいる、尊敬できる師匠がいる、だからそれだけでも幸せ。
楽しく人生を送れれば、それで幸せ。