続けるということ
ふと思い立ち、10年以上昔に勤めていた職場のある駅で降り立ってみました。
駅の周辺はとても変わっていて、綺麗になっていて商業施設も充実しており、カフェやパン屋さん、スポーツクラブまであって、とても驚きました。
私が仕事のあとよく買い物に行っていた施設は、テナントがかなり変わってしまって、よく同僚とお茶をしたカフェも撤退しており、寂しさを感じました。
少し食事とお酒を飲んで、帰ろうと思ったのですが、時たま訪れていたとあるバーの看板が目に入り、フラフラと入ってしまいました。
「10年以上前よく伺ったのですが」と伝えると、
「懐かしいなぁ、変わってないね」とマスターから言われ、込み上げてくるものをおさえられず、涙が溢れてしまいました。
29歳で仕事を辞め、1年半留学したこと。
帰国後勤めている現在の状況。
教師職に就き、勉強を続けていること。
未だに音楽に携わっていること。
…などなど、話は尽きませんでした。
「僕もこの界隈では一番の古株だよ。なにせ17年だからね。3年続けばいいと思っていたんだけどね、こんなに長くなっちゃった。君も大学を出て、働きながらも自己研鑽を積んでいるのは素晴らしいと思う。続けるってほんとに大変なことだからね、よくわかるよ」
飲食の店、ことにお酒を扱う店舗で長く続くことがどんなに大変なことか、私はとてもよくわかります。
お酒とは違うけど、音楽の勉強も同じだと思う。
無くても人生やっていけるものだけど、好きな人にとっては無くてはならないもの。
そんなことを扱っている「同士」として、マスターの言葉はとても身に沁みて、なんだかお酒の味がしょっぱかったのは、気のせいでしょうか。
マスターも歳を取りましたね、と失礼かもしれないことを言うと、「君は変わってないね。ずっと好きなことを貫いているからかな」と言われて、またまた涙が止まらず、困りました(笑)。
きっと、辛くなった時や泣きたい時になったら、また訪れるのかもしれません。
聞き上手なマスターの人柄は、年を経ても変わらず、上質な一晩を過ごしました。