たのしくおんがく。

音楽のレッスン話などを綴っています。

クリエイティヴは管理からは生まれない

会社の新人研修によく使われている、研修専用学校の合宿っていうものがあります。

 

正式な学校名は伏せさせてもらいますが、YouTubeでその学校名を検索したら、お笑い芸人の人が(言っちゃ悪いけど売れてない芸人さんです)その合宿に参加するという企画の映像がありました。

30分以上かかる長い映像だったんですが、最後まで見てしまいました。

 

 

良い気持ちには絶対にならない、と思いました。

ひたすら大声を出させて(声が嗄れるまで)、受講生を限界まで追い込んでいく。

受講生がしたスピーチの内容に関して重箱の隅をつつくかのような駄目出しを沢山する。

怪我をしても倒れても完走しなければいけない夜間行軍。

 

自主性は潰され、講師からは罵倒され、仲間など居てもいなくても同じよう。

 

あまりのおぞましさに何度も頭痛を感じましたが、この芸人さんがこの合宿に来た本当の目的を知りたいという思いで、きちんと見ることにしました。

 

 

研修の最終日、芸人さんは嗄れた声で叫びます。

「私はこの合宿に来る前、芸人をやめようと思っておりました。理由は小さい子供がおり、嫁の腹にも生まれてくる子供がいるからです。この合宿を卒業してからが本当のスタートだと思っております」

そうだね。たしかにそうだね。

 

でもテレビの企画であったとしても貴方にとってこの合宿は無駄だったよ。

そりゃ崖っぷち芸人っていう話題性だけで一瞬の視聴率は稼げたかもしれないけど、

芸人もアーティストも俳優も、クリエイターは「芸を磨いてこそ」の仕事なんだよ。

客を笑わせられない芸人に意味があるのか。

演技力のない俳優に意味があるのか。

なにより、「自分の創り出したものでお客さんに幸せになってもらいたい」っていう気持ちがなくなって、サディストなオヤジどもに「声が小さい!」とか言われて、言われたまんまのことをやるだけの人間が、クリエイターとして生きていけるのか‼️

 

研究の方向性、大いに逸れまくってんじゃん、と思いました。

 

 

少々気になってその芸人さんの消息をググってみたのですが、3年前には清掃の仕事をしていて、奥様とお子さんは別居生活だそうです。

芸人としては活動をしてはいなかった模様です。

 

 

管理、とクリエイティヴ、は本質的には真逆のものです。

「ああしろこうしろ」と言われ続けた人間が自分のしたいことがわからなくなる(かつての自分にもあったのですが)ことで、追い詰められていき、自分を見失ってしまう。

 

自律心を持った上で、自由に楽しく音楽の道を歩いていくことで、いろんな人に幸せを届けたい。それが私の生きたい方向です。

 

 

ちなみに。

コメンテーターのタレントや芸人には笑っている人も居ましたが、誰一人として「目が笑っている」人間がいなかったことも、この合宿訓練の過酷さを裏付けるものでした。

 

今でも、この学校は、存在しています。