たのしくおんがく。

音楽のレッスン話などを綴っています。

ネットの向こうには人間がいる

もう随分昔の話ですが、外国留学&現地の舞台に出演、という垂涎もののチャンス付きのオーディションに参加したことがありました(今はない)。

 

満を持して受けたのですが落ちました。

 

当時の師匠からは「お前が受かると思って指導してやったのに!もう破門だ」と激怒され、拒食気味になり、体重が7キロ落ちました。

 

 

もっとひどかったのは、インターネット上で私の演奏の映像が私の許可なしに流され、沢山の誹謗中傷を浴びたことでした。

「下手くそ」「こんな演奏で留学なんて馬鹿?」「せいぜいライバルの前座で頑張れよ」…etc,etc…

見るに耐えない文章がネット上に散乱していました。

それを思い出しては仕事中も泣き、家に帰っても泣き、職場の人や家族におおいに心配をされました。

外出先で倒れ、救急搬送された病院で点滴を受けたこともありました。

 

 

 

女子プロレスラーの木村花さんが22歳の若さで亡くなられましたが、彼女の苦しみや悲しみ、絶望感を思うと、過去の私を見るようで、とてもとても居た堪れない気持ちを感じます。

 

私はプロレスのことは良く分からないのですが、おそらくたいへん努力家で頭が良く、プロレスを愛していた。そしてプロレスと同じくらい、人を愛していた。

彼女の出ていた「テラスハウス」という番組はよく知らないのですが、その番組がキッカケになってより深い人間性を磨き、それをプロレスにも活かして頑張っていくであろう彼女が、何故こんなことになってしまったのか、とても悲しい気持ちになります。

 

彼女はSNS上で執拗な誹謗中傷を受けていたと、報道にありました。

ツイッターで少し見ると、彼女の死を悼むどころか「死んでくれて良かった」というYouTube投稿まであったようです。

…なんということ(怒)!

言葉を失いました。

 

 

ネットの向こうには生身の人間がいます。

そういう想像力を働かせないヤツが多い気がします。

私がネットで叩かれまくってたときは、あまりSNSって普及してなくて、私への誹謗中傷も業界の人くらいしか見てなかったような感じだったんですけど、今は中高生からみんなやってるから、SNSのイジメって日常茶飯事なんでしょう。

 

 

 

オーディションから数週間後、私はスペインの師匠の元を訪れるために有給を取って旅に出ました。

師匠の顔を見た瞬間、私は子供のように道端で声を上げてわあわあ泣いてしまい、師匠は(日本から私の画像と中傷文を翻訳したものを送っていたので事情は知っていた)そんな私の背中をさすりながら、

「お前はいい歌手で、いい女で、いい人間だ。アレを言ったのは悪いヤツだ。とても悪いヤツだ。必ず地獄に落ちる。必ず苦しむ。お前は苦しまない。俺はお前を愛しているから、日本の大切な娘だから」

と、何度も何度も繰り返し言ってくれました。

 

数日後、師匠は「連れて行きたいところがある」と私を車に乗せて走らせ、音楽の愛好家達のパーティへ連れて行ってくれました。

「日本で歌ったのと同じ曲を歌ってごらん」

「ヤダ!そんな怖いことできない」

「怖くない。お前はいい歌手だ、俺が弾くから、やってみようじゃないか」

 

師匠に誘われるままに歌った私、歌い終えると拍手大喝采が鳴り止みませんでした。

「お前は本場のスペインで認められた。ちっぽけな日本のコンクルソがなんだ。お前の気持ちは伝わった。愛は伝わった。それはとてもグランデ(大きい)なことだ。今夜のことを一生忘れるなよ」と言われ、またまたわあわあ泣いてしまった私(笑)。

なんと、お客様の中には宝石のデザイナーさんがいらして、「アナタにピッタリなネックレスがあるのよ!今夜の記念にプレゼントするわ」と、後日いただいてしまいました。

とても素敵なネックレス、大切にしています。

 

 

 

たくさんの愛情を貰った私は今も元気に生きています。

 

…私はキツいことも言っちゃうかもしれないけど、本質的には人が好き。

だから、愛情を持って、接していきたいと思うんです。

 

(なんか今回も泣きながら書いたなぁ)